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広島花幻忌の会(原民喜文学の研究・継承)

当会は、原民喜の文学を愛する人々の集いです。会からのお知らせを随時更新します。

2020年夏の行事ご報告

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 被爆75年を迎えた2020年8月15日、今年も恒例の「原爆・反戦詩を

読む市民の集い(広島文学資料保全の会・広島花幻忌の会共催)

を開催致しました。

 今年の会場は、広島市南区の旧陸軍被服支廠広島市内最大級の

被爆建物です。全4棟から成る被服支廠は、戦前は軍部の衣服・軍靴

などの軍部衣服関連物を製造する施設。被爆時には、レンガ造りで

あったために焼失・崩壊を免れ、被災者たちの救護所として機能し

ました。

焼けたレンガと赤錆びた鉄の扉の中には、今でも当時の痕跡

をとどめたようなひっそりとした空間が息づいています。

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 以下、写真とともに朗読会のご報告を申し上げます。

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 広島花幻忌の会からは、大学生と市内の高校生らによる民喜作品の朗読を。

 子どもの頃から参加しているリーダーの中原奏さんは、今春から大学1年生。

花幻忌の会や中学高校での活動を通して平和に対する意識を高め、

大学でより学びを深める第一歩を踏み出したばかりです。 

 今回は民喜の言葉に自身の思いを絡めて平和への希望を語り、

立派に進行役を務めました。

 高校生3人らは、原民喜の作品に感銘を受けての参加。

それぞれが「コレガ人間ナノデス」「日ノ暮レチカク」

「かけかへのないもの」など、民喜の言葉に心を重ねての朗読です。

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最後は「永遠のみどり」を力強く全員で。若々しく瑞々しい声には、

戦争のない明るい未来を希う気持ちが溢れていました。

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朝鮮半島の伝統的な民族楽器「チャンゴ」。「死者に捧げる鎮魂の演奏」

をぺ・ハクティさんが奏でます。その素朴な響きは被服支廠に木霊し、

死者たちへの追悼のように流れ…。

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山下雅靖さんのピアノにのせて、声楽家の今田陽次さんがバリトン

の独唱を。

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曲目は、四國五郎さんの詩に山下雅靖さんが曲を付けた

「奪われたもの」や「灯ろう流し」など。

四國五郎さんの言葉に触れ、大変な感銘を受けたという今田さんは、

長年心の中にあった四國五郎さんの言葉を歌曲に託し、心に沁み

いる歌声で再現。

肉親を喪った苦しみと悲しみと…。言葉は曲とともに参加者それぞれ

の心の中に哀切に滲みます。

 

四國五郎さんの日記や、栗原貞子さんの「ヒロシマというとき」

などの朗読もあり、林幸子さんのお孫さんに当たる中山涼子さんは、

ヒロシマの空」を朗読。

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最後は、広島文学資料保全の会の皆さんによる、峠三吉の「倉庫の記録」

「仮包帯所にて」「原爆詩集」序などの群読です。

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原爆投下後に救護所となった被服支廠内の様子

を綴った峠三吉の「倉庫の記録」。

倉庫内で苦しみ悶える被災者の方々の様子が保全の会の方々の

臨場感に満ちた朗読で再現され、聴衆の方からは

「この場で聴くと、惨状が一層の現実感を帯びて

浮かび上がってきます。無くしてはならない貴重な

遺構だと改めて実感しました。」との感想も聞かれました。

 

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被服支廠で製造された軍帽を見つめる高校生

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帽子内側には、昭和18年との製造年も記載。

 

戦前にこの被服支廠で製造された帽子をお持ち下さった方もおられ、

参加者たち各々が被服支廠の持つ「軍都・広島」と「被爆」という

痛ましい歴史を改めて感じ、考える契機になりました。

よりよい保存・活用を目指して皆で協力・努力していきたいものです。

 

当日は酷暑の中、新型コロナウイルス感染症で様々な制約があったにも

かかわらず、多くの方々がご協力くださり、約90人の方々のご参加

を賜りました。文学資料保全の会の皆さまをはじめ、ご協力やご参加の

皆さまに厚く御礼申し上げます。

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(8/16読売新聞)

 

 

※なお、新型コロナウイルス感染症のため延期としておりました

原民喜命日の集い」は、秋の恒例行事「原民喜生誕祭」に

併せて再度催行予定です。

秋の文学散歩も再度企画しておりますので、また追って詳細を会報やブログで

お知らせさせていただきます。引き続きどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

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#被服支廠 #永遠のみどり