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広島花幻忌の会(原民喜文学の研究・継承)

当会は、原民喜の文学を愛する人々の集いです。会からのお知らせを随時更新します。

デジタル近状通信2017年2月ー原民喜碑前祭のご案内ー

春の陽気が待ち遠しいこの頃ですが、皆さまにはお健やかにお過ごしの
ことと存じます。
さて、原民喜の命日(3月13日)に際し、今年も恒例の碑前祭を行います。
今回のお話は、原民喜の甥であり版権継承者の原時彦さんにお願いしております。
写真や動画などの視覚資料を交えながら、民喜が辿った被爆前後の広島の様子を
語って頂きます。
皆さまお誘い合わせの上ご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。




日時 2017年3月12日(日) 13:30〜16:00頃まで

会場 原爆資料館 東館 地下小会議室

プログラム

1) 会場にて献花・黙祷 (天候のこともあり、会場にて遺影に)
2) 作品朗読 若干お願いしておりますが、飛び入りも歓迎致
します。
3) お話「原民喜と辿るー想い出の廣島ー 」原時彦さん
4) 事務局からのご連絡 長津功三良

※ どなたでも参加自由、参加費は頂いておりません。
どうぞお気軽にご参加ください。

※ 年会費は2000円です。どなたでも入会できます。
お問い合わせは事務局まで。
【事務局】岩国市美和町生見長角4011 長津方
☎︎ 0827ー97ー0826

原民喜童話作品紹介 ① ー 誕生日 ー

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誕生日 原民喜

 雄二の誕生日が近づいて来ました。学校では、

恰度その日、遠足があることになつてゐました。

いい、お天気だといいがな、と雄二は一週間も前

から、その日のことが心配でした。といふのが、

この頃、毎日あんまりいいお天気ばかりつづいて

ゐたからです。このまま、ずつとお天気がつづく

かしら、と思つて雄二は、校庭の隅のポプラの樹の

方を眺めました。青い空に黄金色の葉はくつきりと

浮いてゐて、そのポプラの枝の隙間には、澄みき

つたものがあります。その隙間からは、遠い遥かな

ところまで見えて来さうな気がするのでした。

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 雄二は自分が産れた日は、どんなお天気だつたの

かしら、としきりに考へてみました。やつぱり、その

頃、庭には楓の樹が紅らんでゐて、屋根の上では雀が

チチチと啼いてゐたのかしら、さうすると、雀はその

時、雄二が産れたことをちやんと知つてゐてくれたやう

な気がします。
 雄二は誕生日の前の日に、床屋に行きました。鏡の前

には、鉢植の白菊の花が置いてありました。それを見る

と、雄二はハツとしました。何か遠い澄みわたつたもの

が見えてくるやうでした。

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「いい、お天気がつづきますね」
「明日もきつと、お天気でせう」
 大人たちが、そんなことを話合つてゐました。

雄二はみんなが、明日のお天気を祈つてゐてくれる

やうにおもへたのです。
 いよいよ、遠足の日がやつて来ました。眼がさめる

と、いい、お天気の朝でした。姉さんは誕生のお祝ひ

に、紙に包んだ小さなものを雄二に呉れました。あけ

てみると、チリンチリンといい響のする、小さな鈴で

した。雄二はそれを服のポケツトに入れたまま、学校

の遠足に出かけて行きました。
 小さな鈴は歩くたびに、雄二のポケツトのなかで、

静かな響をたててゐました。遠足の列は街を通り抜け、

白い田舎道を歩いて行きました。綺麗な小川や山が見え

て来ました。そして、どこまで行つても、青い美しい空

がつづいてゐました。

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「ほんとに、けふはいい、お天気だなあ」
と、先生も感心したやうに空を見上げて云ひました。

雄二たちも川のほとりで弁当を食べました。雄二が腰を

下した切株の側に、ふと一枚の紅葉の葉が空から舞つて

降りてきました。雄二はそれを拾ひとると、ポケツトに

収めておきました。

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 遠足がをはつて、みんなと別れて、ひとり家の方へ戻つて

来ると、ポケツトのなかの鈴が急にはつきり聞えるのでした。

雄二はその晩、日記帳の間へ、遠足で拾つた美しい紅葉の葉

をそつと挿んでおきました。

 

※ 初出 「近代文学」(昭和28年6月号)

   本文は 定本原民喜全集 II (1978年 青土社) によります。

 

 

 

デジタル近状通信2017年1月ー原爆文献検索サイト開設ー

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1980年代にポーランドで「夏の花」に出会い、1991年からは

広島大学原民喜をはじめとする原爆文学を研究してこられ

た、会員のウルシュラ・スティチェックさんの原爆文献検索

サイトに関する記事が、朝日新聞(2017・1・15)で紹介されま

した。

原爆文学を世界に伝える検索サイト、大変貴重なお仕事です。

 

 

 

 

新年のご挨拶

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 旧年中は皆さまに大変お世話になりました。

いつも誠に有難うございます。

 

広島花幻忌の会では、去る1月8日(日)に世話人会を開催し、

今年も色々な行事に取り組み、皆で力を併せて原民喜の言葉

を継承していくことを確認致しました。民喜文学の、より良

い継承を目指し、皆さまと共に歩みたいと思います。

 

皆さまのご意見やご要望もどんどんお寄せください。

今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

                                広島花幻忌の会  事務局長     長津 功三良

 

 

🌸 今年度最初の行事は、恒例の3月の碑前祭です。日時や

      場所など、また追ってお知らせいたします。

🌸 会の年会費は2000円、どなたでも入会できます。会員

      には近状通信や行事などのお知らせをご自宅にお届け

       致します。

 

         連絡先  岩国市美和町生見4011  

                             長津功三良  tel/fax 0827-97-0826

                                                   携帯 090-9065-5345

                             広島花幻忌の会メールアドレス  

                                                 hananomaboroshi@yahoo.co.jp

 

 

 

 

              

 

 

ごあいさつ

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この度は、原民喜文学を継承する会「広島花幻忌の会」の

ページにご訪問ありがとうございます。

当会は、原民喜の文学作品及び文学資料を継承するため、

2000年に発足致しました。

 

活動としては、年2回の集い(11月の民喜生誕祭・3月の碑前

祭)の他、不定期で研究会や講演会・展示会・朗読会・

「夏の花」を歩く文学散歩の会などの催しを開催。また、

機関誌や民喜作品書籍の編纂及び発行も行っております。

 

会員各位へのお知らせは、これまで会報「近状通信」に

よって行ってきましたが、この度このページを開設し、

どなたでも閲覧可能に致しました。より広く多くの皆さま

に、原民喜に関するお知らせをお届けできるかと存じます。

(集いや催しには、会員外の方も無料で参加可能、お気軽

    にご参加ください。)

 

会からの発信、及び会の活動は、文学関係者らで構成する

世話人会での審議・検討を経た上、顧問・原民喜遺族である

原時彦氏(著作権継承者)の許諾・承認を得て行い、原民喜

文学を次世代へ望ましい形で継承するべく努めております。

 

このページでは、これからも原民喜に関する情報を、より

良い形でお届けしたいと存じております。ご意見などの

コメント、情報提供も歓迎致します。

どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

                                                                広島花幻忌の会

 

 

🌺ご意見や、コメント、ご質問や情報提供は、こちらの

     メール アドレスまでお願い致します。

                                          hananomaboroshi@yahoo.co.jp

 

🌺本文や写真など転載希望の方は上記アドレスまでご連絡

     をお願い致します。無断転載はご遠慮ください。

     

※なお、当会は遺族・原時彦氏長女・友光民子氏を代表と

して、事務局長・長津功三良 及び世話人会の複数人が

運営に携わり、会報及びサイトなど会からの発信につい

ては顧問・原時彦氏に監査・監修を委ねております。